Report2024.05.27

プロジェクトは世界へ。GBAチームエチオピア訪問記(その2)

エチオピアへの支援を開始したGBAの今回の訪問の目的の一つには、現地女性に向けた生理セミナーの開催がありました。渡航前にエチオピアの女性たちの生活や就学状況などを知るにつけて、「生理」がタブーなトピックであることや体についての正しい知識や十分な情報が得られないことで、生きることへの困難さが増しているのではないかと考えたからです。

実際に、エチオピアの様子を知る方に「エチオピアで生理セミナーを開催したい」と伺ったところ、「生理の話以前に、女性の人権すらままならない社会なので、生理について理解を求めるのは少しハードルが高いかもしれない」とのお声をいただきました。しかし同時に、「知ることが社会を変える一歩である」とご賛同の声もいただき、多くの方のご協力によって今回のセミナー開催が叶ったのです。

セミナーは、首都アディスアベバで子どものケアや女性の自立支援を担う非営利団体「Selam Children’s Village(セラム チルドレンズ ヴィレッジ)」にて、Selamの研修制度を利用して縫製技術を学ぶ女子生徒(20歳~22歳)と女性スタッフ(30〜45歳)30名にむけて行いました。30名のうち、約10名は英語が分かる女性たち、残りの約20名はエチオピアの公用語アムハラ語を話す女性たちだったため、セミナーは英語とアムハラ語の同通通訳で行われました。

エチオピア女性たちの反応は?
日本で行なっているセミナーと同様に、「なぜ生理になるのか。どんな症状が起こるのか。経血とは何なのか。100人いたら100通りの生理がある」などの基礎知識からお話しをしました。

女性たちと対話をしながら進めたセミナーで分かったのは、「ほとんどの女性は学校教育の一環として生理について学んでいない」ということでした。

“子供を産める身体になると生理が起きる”ということは口伝えに知っていても、“着床のために子宮の内膜が分厚くなって、妊娠が成立しない場合にそれが剥がれ落ちて経血が出る”ということを初めて知ったという声もありました。

セミナー終了後には、アムハラ語への同時通訳してくれた女性から「もう何年にもわたり毎月の生理を経験してきていたのに、基本的なことも知らなかった自分にびっくりした。」 という声もいただきました。

セミナー後半では、日本のサニタリーアイテムの紹介やBé-A〈ベア〉が手がける吸水ショーツ製品説明、ショーツの開発に至った想いなどをお話ししました。
エチオピアでは生理用ナプキンが高価で入手しづらく、品質も決して高くはないことから、吸水ショーツへの興味関心度は特に高く、「そんな人生が変わるアイテムがあるなんて!試してみたい!作りたい!」という声が多く上がりました。
「そんな製品がこの世に存在するなんて。この商品を私たちが広めたい!」と希望に溢れた皆さんの様子に、エチオピアでの吸水ショーツの普及を必ずや形にしたいと、目頭が熱くなりました。

争いの絶えない地域だからこそのニーズも
セミナーを終えて、あるエチオピア北部出身の女性は「吸水ショーツが内戦中に女性たちの手に渡っていたら、助けられた女性が多くいたと思う」と話してくれました。
2020年11月から2年間続いたエチオピア内戦「ティグレ紛争」が収束したのは、今からたった1年半前。紛争中は、エチオピア北部のティグレ州では道路が封鎖され、子どもを含む多くの女性が強姦され殺されるなど、人道状況が極めて悪化し、物資が何もかも届かない状況となったそうなのです。手にすることができない物資の中には、もちろん生理用品も。

通信も途絶え、家族が生きているかどうかも分からない状況で2年間も過ごさなければならなかったとのことの辛さと、「あの2年間、北部の女性たちは皆必死に耐えていた。洗って繰り返し安心して使えるショーツがあったら…」という心の内を、彼女は何度も私に訴えてくれました。


女性は穢れ(けがれ)。日本とエチオピアの今昔
「現在は、日本ではほとんどの神社に女性が参拝することができる」ことを伝え、「その日本でも、かつては“女人禁制”といって、女性が神社に立ち入ることが許されていなかった。唯一、長野県の善光寺は女性の本堂への立ち入りを認めていたため、女性たちが列をなして参列した」ということをお話ししました。

すると、「エチオピアでは、イスラム教、キリスト教とも、生理中に女性が教会や礼拝堂に入ることは今でも許されていません」という声が上がりました。
初潮が始まると、「生理中は教会に足を踏み入れてはならない」と母親から教わるのだそうです。実際に、私たちが車で教会(エチオピアで主流のキリスト正教会)の前を通ると、白い服に白いベールをまとった数十人もの女性たちが教会入り口に立っているのを見かけました。女性たちはおそらく「生理中」のため、教会の外から家族とは別に祈りを捧げていたのでしょう。

宗教と文化の話に正解はありません。日本の象徴とされる富士山も、明治時代のはじめまでは女人禁制でした。相撲の土俵にはいまだ女性が上がることはできません。日本においてもエチオピアにおいても、誰もが悲しむことのない、より良い社会にしていくために、伝統を大切にしつつも個人の尊厳を守るためにできることが何か、考えることが求められると感じました。

生理に関する理解と配慮は、人権を尊重することにつながります。反対に、生理を「見ざる、聞かざる、言わざる」とタブー視し、それを理由に不自由さを伴うことは、人権が尊重されないのと同じことだと思うのです。
その昔は、女性の生理が尊い命を生むために起きる生理現象であると理解されず、タブー視されてしまっていたというのは理解できます。

ですが、21世紀の現代においてもタブーが続いているのは「無知」「無理解」が原因なのではないでしょうか。それを変えられるのは「教育」であると信じて、生理セミナーを続けています。

女性の身体に、人生の約40年間、毎月のように訪れる生理について、少しでも多くの方に知っていただくことで、性別に関係なく誰もが過ごしやすい社会につながり、公平な社会が目指せるように。これからも活動を続けていきたいなと改めて心から思った、エチオピアでの生理セミナーでした。

今回の訪問を皮切りとして、エチオピアでの吸水ショーツ普及を叶え、女性たちの人生をサポートしたいという想いをいっそう強くして、エチオピアを後にしました。