Report2024.05.23

プロジェクト活動は世界へ。GBAチームエチオピア訪問記 (その1)


女性支援のためのソーシャルプロジェクト「GBA」は、次世代へより良いバトンを手渡すための活動として、性や生理の正しい知識を伝えるべく、国内の学生やその保護者、また企業に向けて、生理セミナーを行っています。

 

このたび、プロジェクト活動を海外へ拡大させる取り組みとして、アフリカ・エチオピアへの支援を開始。それに伴い、GBAチームは3月にエチオピアを訪問しました。

アフリカの北東部に位置するエチオピアは、一人当たりの国民総所得(GNI)は790米ドルと最貧国の水準であり、深刻な課題を抱える後発開発途上国です。
プロジェクトを運営するBe-A Japan代表の髙橋が、エチオピアに訪れて感じたことをレポートいたします。

 


Be-A Japan代表 髙橋が見たエチオピアの生理事情

初めて訪れるアフリカ大陸、エチオピアの食事・文化・歴史と知らないことばかり。5日間と短い期間ではありましたが、生理セミナーを開催することで女性たちのリアルな声を伺うことができ、エチオピアの生理事情について触れられた貴重な経験となりました。

 

まずはエチオピアについてご紹介します。

エチオピアの人口は1億人超*1。アフリカで2番目に人口が多く、日本とあまり変わりません。しかしながら国土は日本の3倍。そこには80以上の民族がいて、それぞれの言葉(つまり80ヶ国語以上!)が使われています。



そういった背景からか、民族間の争いが絶え間なく起こっており、つい2年前に約2年間続いた内戦が終結宣言をしたものの、エリアによってはいまだ非常事態宣言が解けておらず、日本からの「避難勧告」が出ている場所も。外務省からは、「エチオピア滞在中の人は更なる情勢悪化も踏まえ、可能な範囲で食料品等の備蓄に努め、車両や発電機に燃料を補充しておくように」という注意喚起が出ている状況です。*2

国全体の平均年収は1000ドル(約14万円)*3。

我々が訪れた首都のアディスアベバでの一般的な年間給与は7000ドル(約98万円) *3とのこと。都市部と農村部での経済格差が大きいことも特徴です。
内陸国であるために海へのアクセスがしにくく、スーダンやソマリアなど隣国での紛争がある影響で、輸入物資を入手しづらい現状もあります。

 

エチオピア産の生理用ナプキンは?
エチオピアで購入できる生理用ナプキンは、国産のものと海外産のものがありますが、安価なのは国産のもの。とはいえ、1パッケージ150円ほどもするそうで、エチオピアの女性たちにとってかなり高価なものです。
都市部の女性であっても生理用ナプキンを購入できる女性人口は36%程度*。それ以外の女性たちは、くず綿を使ったりと生理期間に学校へ通えないのは当たり前の状況だそうです。

エチオピア産の生理用ナプキンを初めて手に取ってみると、その質はお世辞にも良いものだとは言いがたいもの。30年ほど前に私が留学していたイギリスで、当時販売されていた「ビニール感が強く、漏れはしないかもしれないけれど、ものすごく蒸れそう」な生理用ナプキンでした。

エチオピア産の生理用ナプキン


それでも、生理用ナプキンを購入できる女性たちは恵まれていると言えますが、エチオピアの女性たちからは、「このような生理用ナプキンに満足していません。でも高価だから、漏れるギリギリの極限まで使用しています。1日8枚も10枚も使用することはありません」という声が聞かれました。「蒸れる不快感や、デリケートゾーンのかぶれ、ニオイはありますか?」と聞くと、一様に大きく頷いていたのが印象的でした。

 

生理用ナプキンを購入できる場所は、街中にある路面店です。店内には、粉ミルクやオムツなどが売られているので、一見すると危険を感じる雰囲気はありませんでしたが、購入する際、引率の方から「スマホを出して写真を撮らないで。盗難に狙われるので」と言われ、ドキドキしながら直ぐに車に戻りました。エチオピアが貧困社会であるということを、こういった場面でも実感します。

生理用ナプキンを販売する路面店

 

 

生理中は学校に通えないことが当たり前

生理中に通学できないという状況は、なんと大学まで続いているそう。エチオピア最古の大学(国内ランキング1位*4)であるアディスアベバ大学に通う女子生徒は、比較的裕福な家庭から通う生徒が多いのかと想像しましたが、以前同大学の教授だった方とのミーティングでは「女子生徒たちが生理用品を入手できず授業を休み、それを口に出すことができず、ただ“体調不良”と言ってかなりの頻度で休んでいた」というお話を伺いました。

連合工業開発機関の方とのミーティング

 

さて、トイレ事情についてもお伝えしましょう。ホテルや高級レストランではなく、一般的なエチオピアの現地のトイレを使用してみました。流れない、汚物入れが無い、トイレットペーパーがない(高価なものなので)、手が洗えない、が当たり前。なので、生理用ナプキンを使っている場合には、ポーチを持ち歩き、使用済みの生理用ナプキンを一日中持ち歩くのが習慣とのことでした。

 

ちなみにトイレは写真のようないわゆる“ぼっとんトイレ”。pit latrineと呼ばれる様式で、家庭用トイレはこの形が一番多いそうです。
2016年の調査では、1/3の家庭にトイレがないということも明るみになりました。*5
生理の問題を語る前に、衛生面でも課題の多い国でもあります。

 

エチオピアの一般的なトイレの様子

 

 

エチオピア女性の吸水ショーツへの反応は?

エチオピアの女性たちにBé-A〈ベア〉の吸水ショーツをご紹介したところ、「1日このショーツだけで過ごせる」「繰り返し使える」「手ぶらでトイレに行けて、手ぶらで出られて、ゴミも出ない」「かぶれにくい」なんて夢のよう!と目を輝かせてくれました。
先進国から渡航してエチオピアで就労している国連やNPOで働く女性たちもまた、同様に不便さを感じているとのこと。「母国に帰国する度に、スーツケースの半分を埋めるほどのサニタリーグッズを持ち帰るのです」と口々に教えてくれました。

エチオピアでの生理用品を入手しにくい状況と、生理の知識そのものが不足していること。それらが原因となって教育や就労の機会を失われている女性たちの困難を目の当たりにし、GBAを通してサポートしていきたいという想いがいっそう強くなりました。

繰り返し洗って使える吸水ショーツを自国で製造することができれば雇用が生まれます。そして、吸水ショーツを穿くことで女性たちは自由や権利を手に入れられるでしょう。決して大げさでなく、女性が自立し、男性とともに活躍することは、エチオピアという国自体の豊かさへの一歩となると思います。来訪前に想像していたよりも、はるかに大きく吸水ショーツの可能性を感じた5日間となりました。


参照元

*1 https://www.worldbank.org/en/country/ethiopia/overview

*2 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_095.html#ad-image-0
*3 https://www.averagesalarysurvey.com/addis-ababa-ethiopia

*4 https://edurank.org/uni/addis-ababa-university/rankings/#:~:text=Addis%20Ababa%20University%20ranked%201st,50%25%20across%20129%20research%20topics.
*5https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10395897/#:~:text=The%20most%20common%20type%20of,for%20defecation%20(Fig%201).&text=Type%20of%20toilet%20facilities%20in%20Ethiopian%20households%2C%20EDHS%2C%202019.

 

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