Report2025.11.07

『“痛みを知る”ではなく“思いやりを学ぶ”』千葉県立千葉中学校にて生理セミナーを開催。

Be-A Japanが運営する女性支援ソーシャルプロジェクト「GBA(ジービーエー)」は、2025年10月1日(水)に千葉県立中学・高等学校にて、中学3年生の男女80名とその保護者を対象とした『生理セミナー』を開催しました。

きっかけは1人の生徒から。
千葉県立千葉中学校で、初の「生理セミナー」実施へ。

千葉県立千葉中学校(以下、千葉中学校)は、主体的な学びを通じて人間力を培い、日本でそして世界で活躍する心豊かな次代のリーダー育成をする中高一貫校です。探究的な学びを重視し、「ゼミ」形式で生徒が自らテーマを設定し探究を進める学習活動が特徴です。
今回のセミナーは、自身の体験から「生理を通して、学校や社会全体でジェンダー理解を深めたい」という思いを持つ千葉中学校3年生・渡辺さんからの発信で実現いたしました。
GBAのセミナーでは、知識を習得するだけでなく、互いの立場への共感や配慮の意識を育むことに重点を置いています。

今回は、生理の基礎知識を学ぶ講義に加え、実際に生理用品に触れるワークショップや、生理痛を疑似体験できるプログラムを実施しました。
さらに、生徒たちが体験や学んだことをもとにディスカッションを行うことで 、主体的に意見を交わす場を設けました。
こうした体験を通じて生理に対する正しい理解が深まることで、将来の職場や家庭でのジェンダーギャップの解消 、そして誰もが快適に過ごせる社会の実現へと繋がると確信しています。

有志の男女生徒10名が、生理痛を疑似体験! 痛みではなく「理解と対話」を育む時間に。
本セミナーでは、株式会社リンケージ様の協力のもと、筋電気刺激(EMS)を活用した生理痛VR体験装置「ピリオノイド」を導入。腹部に電極パッドを装着し、生理痛の疑似体験をしてもらうというものです。
事前に体験の希望者を募り、保護者同意のもと、有志の男女10名が実際に体験しました。
※体験は、リンケージ社様のサポート下で、安全・人権に十分に配慮して実施。体験者の意志でいつでも体験を終了できるような環境で行いました。

体験した男子生徒からは、

「お腹を何度も強く押されている感じ」

「この状況で50m走は難しい……」

「テストなんて耐えられそうにない……」

と驚きの声が上がり、女子生徒からも

「私の痛みはもっと強いかもしれない」

「生理痛があまりないタイプなので、痛みが強く出る人の気持ちがわかった」

といった感想が寄せられました。

生理痛疑似体験を通じて、生徒たちは“痛みの個人差”や“共感の重要性”を実感。学校生活の中での過ごし方など、リアルな場面に思いを馳せながら理解を深める貴重な機会となりました。

「もし自分だったら」「友だちが困っていたら」-グループディスカッションで想いを共有
ディスカッションでは、グループごとに分かれ、3つのテーマに沿って話し合いました。
生徒たちが当事者の視点に立ち、学校や社会で互いに思いやるための具体的なアイデアについて、実践的な意見を活発に交わしました。

1. 期末試験当日に生理痛がひどい女子生徒に対して、学校側ができる配慮はある?

● 保健室での受験や、申請すれば前日に受験できるようにするなど、公平性を保ちつつ苦痛を和らげる配慮があってもいいかも。

● 「別室での受験は嫌だ」という女子生徒の意見もあり、湯たんぽや温かい飲み物、膝掛けの提供など、当事者の気持ちに寄り添う環境整備が必要。

2. 生理が重い女子と軽い女子がいる中での体育の授業は平等に行われるべき?

● 「平等に扱われるべきではない」という意見が多数派。辛い場合は休む、見学するなど、柔軟な対応が必要。

● 「生理です」と言いにくい生徒がいることから、「今日は体調不良です」と言いやすい環境を先生が作ってくれると安心できる。

● 痛みのない生徒に対しては、痛がっている子をバカにしない、サポートしてあげる意識を持つべき。

3. ディズニーランドで友人が急に生理になった際、できることはある?

● 上着を貸す、腰に巻くような服をすぐに買う、冷静に対応する。

● 「同性の方がサポートしやすい」としつつ、男性は「温かい飲み物を買ってきてあげる」「荷物を持ってあげる」など、性別に関わらずサポートできることを見つける。

● ナプキンや痛み止めがもらえる救護室に案内する。

このディスカッションに「正解」や「不正解」はありません。
大切なのは、当事者の気持ちや、その状況で周囲に何ができるかを深く考えること、そして、それぞれの「想い」を、性別を超えて共有し合うことです。
他者の痛みに寄り添い、自らの意見を表現することで、未来の社会を築くための共感と配慮の土壌を育みました。

千葉県立千葉中学校 黒川健太先生からのコメント
セミナーを通じて、生徒も職員も生理に対する意識が大きく変化しました。
実際に起こり得る状況を想定したディスカッションや生理痛体験を通じて、生徒たちは多くの気づきを得ることができました。この学びを活かし、社会に出てからも他者を理解し、尊重しながら協働して課題を解決できる人へと成長してくれると信じています。
一教員としても、性別を理由にせず生徒一人ひとりに寄り添えるよう意識し、今後も学びを重ねていきたいと感じました。

生徒の提案を実現するために、開催にご尽力くださった『Bé-A Japan』ならびに『リンケージ』の皆様に心より感謝申し上げます。

千葉県立千葉中学校 渡辺さんからのコメント
生理中の辛さをどうしたら理解してもらえるのかと思ったのが、このセミナーを提案したきっかけです。
先生方のご支援により、Be-A Japan、リンケージ社の皆様にセミナーを開催していただきました。
生理という内容に触れることは不安でいっぱいでしたが、皆が講義に真剣に耳を傾け、性別を超えて話し合うことができ、有意義な時間でした。
また、生理痛体験を通して、男性も女性もその痛みを知り、言葉にして伝えてもらうことで理解の幅を広げることができたと思いました。
生理と無関係な人なんていません。生理について、知る機会を増やすことが大切だと考えます。
生理を他人事にしてはいけない。そんな考え方を持つ人が増えたらいいなと思います。

事前アンケートでは、女子生徒は「男子と一緒に受けること」に、男子生徒は「生理について学ぶこと」に、それぞれ少し抵抗を感じている様子が見られました。
そこで冒頭に髙橋より、「この2時間だけは心を真っさらにして、恥ずかしがらずに生理について聞いて、考えてみてほしい」と伝えたところ、時間が進むにつれて生徒たちの表情や姿勢がみるみる変化。

真剣に耳を傾ける姿に、頼もしさを感じました。

中学3年生という“少し照れのある年頃”だからこそ、外部から率直に伝えることの意義を改めて実感。
この経験を糧に、今後も情熱を持って活動を続けていきます。